自己を知り、コミュニケーションを大切に ~人とのつながりが新しい人生を創造する~ITコーディネータ 馬場 尚子

IT コーディネータ協会との出会い

 1985年から独立系SI 企業を2社、プログラマーからSE、コンサルティング活動に従事。出向転籍など多々ありましたが、合計で約30年間サラリーマン生活を送りました。その中でIT コーディネータという言葉に初めて触れたのは、2社目の独立系SI 企業グループのコンサルティング会社に在籍していた頃だったと思います。

 所属会社にIT コーディネータ協会の立ち上げに参画してほしいとの要請があり、同僚が数名、参画プロジェクトのメンバーに抜擢されました。その頃、某省の情報化企画プロジェクトに参画していて多忙な毎日を過ごしていましたので、どちらかといえば、立ち上げ活動を傍観していた側でした。

 私自身が直接IT コーディネータに関わるきっかけとなったのは、2003年頃。出向していたコンサルティング会社から本社へ戻り、新しい組織方針にて資格取得が求められ、候補の中にIT コーディネータが挙がっていたため、思わず研修に参加しました。まだ15 日間研修の頃でしたので、課題作成はいつも夜中。実務とかぶるところも多かったので、プレゼン資料や発表に熱が入ったことを思い出します。

 その頃の主な業務は、現状分析からめざすべき姿までの道筋を示す情報化企画作成、およびプロジェクト管理でしたので、ITC プロセスガイドラインはとても役に立ちました。提案書のひな形に活用したり、業務に標準的なプロセスとして活用したり、参画するプロジェクトのプロセスに漏れがないかの確認や、問題点抽出などにも有効なツールでした。

遠距離介護、独立、仲間との組織立ち上げ

 2010年、父が手術のため入院。その後、誤嚥性肺炎から長期入院となり帰らぬ人へ。ひとりで生活することになった母のため、年に数回、定期的に帰省する日々が数年続きました。しかし、認知症が発覚し、グループホームへの入居手続きひとつとっても、その都度帰省しなければならない状況となり、結局2014年、主人と相談のうえ、サラリーマン生活を断念。正式に退社。しばらくは介護のための帰省にほとんどの時間を費やす生活がスタートしました。

 退社後、細々ながら仕事もやり始めていた矢先、先に辞めていた前会社で苦楽を共にした友人から数名のメンバーとIT コーディネータの育成を主体とした会社を興したい、との相談がありました。メンバーはみな、個人事業主や会社役員など、自分の仕事を持ちながらの関わり合いになるとのことでしたが、「ITコーディネータの育成」という、その趣旨に賛同し、2015 年に有限責任事業組合 I&I Management Firm を数名で立ち上げました。その事業部として、ITコーディネータ協会の届出組織【I&Iファーム東京】を申請し、現在に至っています。

I&Iファーム東京 ホームページより(http://www.iif-tokyo.jp/)

 私の場合、今までサラリーマンしか経験がないため、立ち上げ当初はわからないことも多く、組織の仕組み作りに翻弄されましたが、「IT コーディネータ育成にチャレンジするのだ」、という同じ目的に向かってメンバー全員が力を結集させ、少しずつ形になっていったのを今でも思い出します

 I&I ファーム東京としての活動は、ケース研修、通学講座主体の試験対策、およびフォローアップ研修が中心でしたが、通信講座など試験対策のカリキュラムを少しずつ充実させ、ガイダンスも増やしながら集客活動にいそしんでいます。ITコーディネータのコミュニケーション・勉強の場も定期的に開催し、多くの方々に参画いただいています。

 一方、個人の活動としては、医薬品関連企業向けに運用業務構築支援、PM 育成カリキュラム開発支援、人材育成体系企画支援。金融機関向けにPMO 支援。卸売業向けには在庫管理業務改善支援など、多岐に亘っています。

 日本経営品質賞の審査員も、積極的に応募するようにしています。実際の企業の実態を短期間に評価するのはとても大変なことですが、IT コーディネータとして活動していくうえにおいても、本当に自分の糧となり、財産となっています。ケース研修やフォローアップ研修で講師をする際にも、その経験を補足や解説に活かしています。

 中小企業のお客様は多くの投資を割くことにどうしても消極的になりがちです。そういうお客様には、補助金や支援業務の申請からお手伝いするだけでも支援となると思っています。「攻めのIT 経営中小企業百選2016」に担当したお客様が選定されたことも嬉しい成果です。

独立に向けてのポイント

 よく勉強会の参加者から、「IT コーディネータになれば独立して食べていけますか?」と質問されます。答えは「No!」 「資格を取ったからといって、すぐに仕事が入ってくる訳ではありません。」とお答えしています。大切なのは、「IT 経営推進ガイドラインに照らした場合、自分は支援者として何が得意か?何が不得手か?」をしっかり把握することだと考えています。

 現在企業で働いている方は、ぜひ自分を把握するとともに、自分の不得手な部分を補完してくれる友人、パートナー、あるいは過去にお付き合いしたお客様とのネットワークをしっかり繋いでいくことが大切です。IT コーディネータ協会からのビジネスマッチングメールにもご留意ください。協会からWG(ワーキンググループ)の募集があったら、積極的に手を挙げてみるのもいいと思います。また、地域の商工会議所等に足を運んでみてください。IT コーディネータとしての知識や実践力も必要ですが、同じくらいに人とのつながりが重要となります。

 届出機関が開催している勉強会にも積極的に参加するといいと思います。そこで知り合った人から仕事が舞い込んだ当機関の受講生もいます。チャンスは自分でつかむもの。ぜひ、ケース研修やガイドラインの熟読により試験対策で培ったノウハウを活かし、IT コーディネータとして一緒に中小企業のために支援を行っていきましょう。

(ITコーディネータ協会 機関誌「架け橋」25号「独立のキーポイント」より)


馬場 尚子

I&Iファーム東京/ 有限責任事業組合 I&I Management Firm 理事。ITコーディネータケース研修、試験対策、フォローアップ研修等、ITコーディネータの資格取得および取得後の育成に参画し、セミナー講師および組織運営等を担当/ 約30 年の独立系SI 企業での経験を活かし、業務分析から情報化企画、ITコンサルティング等を数々の企業向けに実施/日本経営品質セルフアセッサー。日本経営品質賞審査員として、卓越した企業の創造を支援。/ 「経営分析の0から100」(秀和システム)共同執筆。