人とのつながりが道を開く~ITコーディネータ 桒原 篤史

先行き不安なWeb 制作事業者として独立

 私は2013 年にITC 資格を取得しましたが、その4年前2009 年にWeb 制作事務所を開設し、独立しました。 独立以前は印刷やサイン関係の会社で約15 年間企画営業を行ってきました。Web とはあまり縁のない業務を行っていましたが、自社サイト立ち上げのプロジェクトに参画したことがWeb の世界に関心を持つきっかけとなり、そこから知識や技術を学び始めました。

 先だって、家族(妻)がフリーランスのWeb デザイナーとして活動をはじめており、営業力をつけて受注を伸ばしたいので力を貸してほしいと請われ、会社を退職し二人で事務所を立ち上げることとなりました。当時は、独立志向が強かったわけではなかったものの、目の前に現れた新しい世界に挑戦してみたいという思いが強くなり独立を決意しました。

 もともと営業職だったため「やればなんとかなるだろう」という根拠のない自信と「大丈夫だろうか」という不安が複雑に混じり合いながら、新しいキャリアが始まりました。それが2009 年1 月のことでした。

 独立当初よりリーマンショックの影響もあり、厳しい船出となりました。飛び込み営業やビラ配りなどできることはやりましたが反応はほぼなく(これは早く仕事を得たいがための誤った営業手法でした)、戦略を練り直し自社サイトの徹底したSEO 対策に取り組み、「Web 屋がWeb で集客できることを証明する」ということを実践しました。これが功を奏し、やがて売り上げの大部分がWeb サイトからの受注というところまでに至りました。

ITC との関わり

 独立して間もなく、前職でお世話になったITC の先生からWeb 関係のセミナーへお誘いいただき参加しました。そこで現在の私の活動に大きな影響を与えるITC のK さんとの出会いがありました。

 しばらくの間、K さんとはビジネスパートナーとして仕事を発注してもらうという関係でしたが、やがて勉強会や会合などにも声をかけていただくようになり、多くのアドバイスや指導をしていただく師匠と弟子のような間柄にもなりました。K さんの示してくれたリーダーシップや仕事に向かう姿勢は、自分の「こうありたい」という姿を示すものでした。

 2012 年に入り、クライアントも増え事業が軌道に乗り始めた頃にITCの資格を取得しました。

 資格は取得したものの、これを活かして自分はどんなビジネスをする?というプランはありませんでした。少しでも事業のプラスになるならと思い取得したITC 資格。そして“ただの” Web 制作事業者から脱却することが事業を発展させる上で重要であると認識していたものの、どうステップアップしていくのか手段を探しあぐねていました。

 そんな中、悩みや疑問をKさんに相談できアドバイスいただけたことが自身の未来図を描く契機となりました。

ITC としての活動をスタート

 そして、今までのWeb 制作の業務とあわせて、コンサルタントとして積極的に活動をはじめました。

 当初は、Web 制作事業者としての立場からの意識転換がなかなかできず、非常に悩みました。それもいろいろなITC の先輩方に話を聞き、経験を積み重ねていくことで少しずつ改善していくことができました。

 東京商工会議所様のWeb 戦略パートナー認定、西武信用金庫様のIT サポート事業の専門家登録、ミラサポの専門家登録、そして届出組織(一社)IT 活用サポーターズの立ち上げなど、いままで経験したことないビジネスに多く携わることができ、コンサルタントとして活動の場を拡げていきました。

 その後、ITCA のWEB 活プロジェクトの認定コンサルタントに任命され、セミナーや研修講師の依頼なども受けるようになりました。もともと人前で話すことが苦手だったためセミナー・研修の講師の依頼があっても敬遠しがちでした。最初のうちは失敗を重ねましたが、多少ユーモアを盛り込む余裕も持てるようになり、受講者から良い評価をいただけるようになりました。

 その他にも多くのプロジェクトや会合に積極的に参加するように心がけ、人脈を広げるよう努めてきました。

 現在はケース研修の運営サポートも行っており、ITC の育成にも微力ながら携わっています。

地元神奈川を離れ福島へ

 2015年11月、家族にとっての暮らしやすさを求めて、生まれ育った神奈川県から妻の生まれ故郷の福島県に移住しました。

 インターネットが使えればどこでも仕事ができるという考えもありましたが、福島県内のクライアントはゼロからのスタートでした。移住後も地元のITC の先輩を紹介してもらい情報交換させていただいたり、元営業職の行動力を活かし、県内の商工団体を訪問するなど、知名度を上げる活動を地道に行いました。その甲斐あってか、今では地元のIT 専門家として企業支援やセミナー講師の依頼も増えてきました。

 移住して約3年半が経ちましたが、まだまだ活動の多くは東京・神奈川で、これからは福島での活動の比率を徐々に増やしていき、地元を盛り上げる活動をしていきたいと考えております。

独立を考えているみなさんへ

 私は今年で独立して11 年目になります。

 今こうして一人のコンサルタントとして活動できているのは、やればできるという可能性を信じて行動し、そして信頼できる人とのつながりができ、その方々に支えられてきたからこそだと思っています。

 ありがたいことに私はビジネスのターニングポイントで多くの新しい出会いに恵まれました。

 ぜひ独立を目指す方や独立して間もない方は、積極的に人と交流し信頼できる仲間を増やしていってください。一人でできることには限界があり、独立してビジネスを続けていくには多くの人脈が絶対に必要です。もう一つ、依頼のあった仕事は断らない、これも非常に重要です。とにかくチャレンジ精神でいろいろな経験を積み重ねてください。

 独立してビジネスを行っていくということは、会社員時代には感じたことのないプレッシャーや厳しい局面に遭遇することもありますが、それを乗り越えて得る喜びや充実感があります。

 私はこれからもいろいろな方々との交流を広げるための活動を行っていきます。

 是非、イベントなどで私を見かけたら声をかけていただけると嬉しいです。

 同じITC として中小・小規模事業者を盛り上げていく活動を一緒に行っていきましょう。

(ITコーディネータ協会 機関誌「架け橋」26号「独立のキーポイント」より)


桒原 篤史

アイバーグ代表、一般社団法人IT 活用サポーターズ 理事
大学を卒業後、印刷・サイン関係の企業で約15 年間企画営業を担当。2009 年1月にWeb 制作事務所を開設し独立。
2015 年11月に福島県白河市に移住。東京、神奈川、福島などで企業支援やセミナー・研修講師などの活動を行っている。2013 年ITC、2016 年上級ウェブ解析士取得。神奈川県川崎市出身